ニューヨーク州の 375 の裁判所で NDI システムを導入、現在も導入数は増加中
(2026 年 7 月投稿)
参考元:NY State Unified Court System Deploys 10,000 NDI Endpoints across 375 courtrooms (and Counting)
ニューヨーク州では現在、裁判所の近代化プロジェクトが積極的に進められています。この取り組みは、単なる設備の更新や IT 化だけではなく、ニューヨーク州統一裁判所システムが「人を中心としたプロジェクト」と位置付けている点が大きな特徴です。陪審員や原告・被告、弁護士、裁判官など、法廷を利用するすべての人にとって、より快適で利用しやすい環境づくりを目指しています。
このプロジェクトで重要な役割を担っているのが NDI のテクノロジーです。NDI を活用することで、証拠映像や資料を分かりやすく表示しながら、適切な映像管理を実現しています。さらに、庁舎内のデジタルサイネージの運用や映像システムの管理にも活用されており、高い安定性を支えています。
導入効果も非常に高く、システム全体の稼働率は約 97% を達成。さらに、ヘルプデスクへの問い合わせの 75~80 %をリモートで解決できるようになりました。導入や運用も比較的容易なため、IT や映像システムの専門家ではない裁判所職員でも扱いやすく、日々の運用負荷の軽減にもつながっています。
さらに注目したいのがコスト面です。ニューヨーク州の法廷近代化部門(Courtroom Modernization Department)では、従来型の AV システムを導入した連邦裁判所と比較して、およそ半分のコストでシステムの更新を実現しました。NDI は、運用効率や利便性を向上させるだけでなく、大幅なコスト削減にも貢献する技術として高く評価されています。
新たな取り組み
世界中の法廷では日々、人々の人生を左右する重要な判断が下されています。だからこそ、正確で円滑な法廷運営を支える環境づくりは欠かせません。その実現を支えているのが、映像やネットワークをはじめとする最新のテクノロジーです。
ニューヨーク州の法廷近代化部門(Courtroom Modernization Department)では、こうしたテクノロジーを積極的に活用し、司法環境をより使いやすく、より効率的なものへと変革する取り組みを進めています。目的は単なる設備の更新ではなく、裁判官や弁護士、陪審員、そして裁判所を利用するすべての人にとって、より良い法廷環境を実現することです。
裁判所を訪れる人にとって、その日は人生で最も大きなストレスを感じる瞬間になるかもしれません。
離婚問題や刑事事件など、さまざまな事情を抱えた人々が裁判所を訪れます。だからこそ私たちは、その人たちが経験する時間そのものを精神的により良いものにしたいと考えています。私たちは単なるテクノロジー部門ではなく、人を中心に考える組織なのです。
法廷近代化部門 中央サービス担当 シニアマネージャー、Vincent Riccobene 氏。
Vincent 氏とそのチームは、裁判所を利用する人々や職員が抱えるさまざまな課題に対し、テクノロジーを活用した改善に取り組んでいます。では、彼らはどのような課題を解決するために NDI を採用したのでしょうか。
Nassau County 最高裁判所
スクリーンで確認する証拠提示の課題
例えば、金融犯罪の裁判で帳簿や取引記録が証拠として提示されるケースを考えてみましょう。証拠画像が法廷前方のスクリーンに映し出されたとしても、陪審員が離れた席から目を凝らし、首を伸ばして確認しなければならない環境では、内容を正確に理解することが難しくなります。
本来であれば、裁判官や弁護士、書記官、陪審員など、それぞれの立場に応じて見やすい位置にモニターが配置され、誰もが同じ情報を確実に共有できる環境が理想です。しかし、ニューヨーク州の法廷で採用されていた従来の HDMI マトリクスシステムでは、接続できるモニター数に限りがあり、十分な表示環境を整えることが難しいという課題がありました。
さらに、証拠映像や資料の管理にも課題がありました。証拠は法廷内で共有するだけでなく、受け渡しや利用履歴を適切に記録・管理する必要があります。そのため、裁判官や書記官には大きな運用負担がかかり、証拠提示のプロセスが複雑になることで、法廷全体の運営効率にも影響を及ぼしていました。
こうした課題を解決し、誰もが見やすく、スムーズに証拠を共有できる環境を実現することが、ニューヨーク州の法廷近代化プロジェクトにおける重要なテーマの一つとなっていました。
数千台の機器を支える運用面の課題
州内に設置された数千台もの機器を管理するうえで、大きな課題となっていたのが運用面でした。特に、既存システムにはリモートアクセス機能が備わっておらず、トラブルが発生するたびに技術者を現地へ派遣する必要がありました。一方で、システム運用を担当していたスタッフはわずか十数名しかおらず、限られた人員で州全体の法廷システムを支えなければならない状況だったのです。
また、法廷内に設置されたモニターは長時間稼働することが多く、発熱による故障が頻繁に発生していました。機器の寿命も約 2 年と短く、交換や保守にかかるコストが大きな負担となっていました。
さらに、従来のシステムにはオープン API が用意されていなかったため、他システムとの連携や機能拡張を柔軟に行うことがきず、その結果、新しい技術やサービスを取り入れにくく、将来的なシステム拡張においても大きな制約となっていたのです。
このように、ニューヨーク州の法廷では、映像表示だけでなく、運用・保守・拡張性のあらゆる面で課題を抱えていました。そのため、これらをまとめて解決できる新たな映像インフラの導入が求められていたのです。
求められるハイブリッド法廷への対応
コロナ禍以降、法廷においても対面とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド法廷」への対応が求められるようになりました。しかし、当時のニューヨーク州の法廷では、大型ディスプレイ 1 台を中心とした映像表示環境が主流だったため、オンライン参加者の映像や資料を十分に共有することができませんでした。
その結果、法廷にいる人と遠隔から参加する人との間で情報量に差が生まれ、裁判官や弁護士、陪審員を含むすべての関係者にとって、理想的なハイブリッド環境とは言えない状況でした。
こうした課題を解決するため、 Vincent 氏とそのチームは、州内外の裁判所を訪問し、さまざまな映像システムや最新テクノロジーの導入事例を調査しました。その過程で実際に NDI を試験導入したところ、高い柔軟性と拡張性を備えたテクノロジーであることを実感したといいます。
さらに、既存のネットワーク環境をそのまま活用できる導入のしやすさに加え、豊富な SDK による高い拡張性も大きな評価ポイントとなりました。こうした点が決め手となり、ニューヨーク州の法廷近代化プロジェクトでは NDI の採用が決定されました。
私たちは、人を中心に考える組織です。実際に裁判所を訪れ、利用者や職員がどこに不便さや課題を感じているのかを確認します。そして、その課題を解決するためのソリューションを生み出していくのです。
Vincent Riccobene 氏
ニューヨーク州統一裁判所システム

DCM ワークフロー図
NDI は課題解決の糸口
NDI は、さまざまな課題を解決する柔軟な映像ソリューションとして、高い拡張性と自由度を活かし、証拠提示やハイブリッド審理、設備管理までを支える新しい法廷システムの構築を実現しました。
さらに、裁判所を訪れる人々を案内するため、600 台を超えるディスプレイを活用したデジタルサイネージシステムも導入されています。庁舎内の案内表示や情報共有を効率化することで、来庁者の利便性向上にも大きく貢献しています。
こうした取り組みにより、ニューヨーク州ではよりスマートで使いやすい法廷環境が実現しました。NDI を中心とした映像インフラは、法廷運営の効率化だけでなく、裁判官や弁護士、陪審員、そして裁判所を利用するすべての人にとって、より分かりやすく利用しやすい司法環境づくりを支えています。
NDI は単なる映像伝送のテクノロジーではなく、人と情報をつなぎ、司法のデジタル化を支えるインフラとして、その価値を発揮しています。
裁判官から陪審員まで、誰もが見やすい映像環境を実現
ニューヨーク州の法廷では、NDI のマルチキャスト機能を活用し、1 つの法廷に 25 ~ 30 台ものモニターを設置しています。従来のシステムでは、これだけの数のディスプレイへ同時に映像を配信することは容易ではありませんでした。しかし、NDI を採用したことで、多数のモニターへ同時配信しても画質や安定性を維持できる環境を実現しました。
設置されているモニターは、利用者ごとの役割に合わせて最適なサイズや用途が割り当てられています。
- 裁官席の後方には、85 ~ 98 インチの大型モニターを 2 台設置
- 陪審員席の前後にも、85 ~ 98 インチの大型モニターを設置
- 観客席には、55 ~ 65 インチの大型モニターを 2 台設置
- 陪審員席には、陪審員 2 人につき 1 台となる 19 インチモニターを 6 ~ 8 台設置
- アルタイム字幕やアクセシビリティ支援を表示するための、19 インチモニターを搭載した移動式カートを用意
- 証言台や弁護士席には、証拠への注釈を書き込める 24 インチのタッチスクリーンモニターを設置
- 裁判官や書記官、速記官など、それぞれの業務に応じて 15 ~ 22 インチの小型モニターを配置
- 裁判官・書記官・弁護士向けには、証拠提示システムを管理する 12 インチモニターを 3 台設置
これらの設備により配信中の映像ソースや表示先をリアルタイムでの確認を以前より簡単にしていて、さらに、NDI SDK を活用して独自の法廷運用アプリケーションも開発されています。このアプリにより、裁判官や書記官は証拠資料の管理や承認フローをさらに効率的に行うことが可能になりました。
例えば、陪審員へ証拠資料を表示する際には、裁判官の承認後にのみ書記官が配信できる仕組みを採用しています。これにより、証拠の適切な管理を維持しながら、スムーズな法廷運営を実現しています。
また、弁護士は証拠資料に直接注釈を書き込んだり、重要な箇所を囲んだりすることで、伝えたいポイントをより分かりやすく説明できます。
証拠提示の操作も非常にシンプルです。ノート PC やスマートフォン、タブレットを HDMI や USB-C で接続するだけで、誰でも簡単に証拠資料を表示できます。実際に親権審理では、保護者が自身のスマートフォンに保存された写真をその場で提示するなど、従来では難しかった柔軟な運用も実現しています。
誰もが参加しやすいハイブリッド法廷へ
NDI の導入により、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド審理も大きく進化しました。これまでのように、遠隔参加者が疎外感を覚えたり、法廷内の参加者が限られたディスプレイを見づらい姿勢で確認したりする必要はありません。対面・オンラインを問わず、すべての関係者が同じ法廷空間を共有しているかのような、自然なコミュニケーション環境を実現しています。
その中核となっているのが、NDI を活用した柔軟な映像システムです。
- 1 つの法廷に 4 ~ 6 台の NDI 対応カメラ(固定カメラおよび PTZ カメラ)を設置し、遠隔参加者も法廷内の様子を正面から自然な視点で確認できます。
- ManyCam を活用して複数の NDI 映像を 1 つの仮想カメラ映像として統合し、Microsoft Teams でもスムーズな映像共有を実現しています。
- Pearl Nexus を活用し、注目度の高い裁判の映像を別の法廷へ配信。傍聴希望者が多い裁判でも柔軟な運営を可能にしています。
また、法廷内の参加者も、それぞれの席に設置されたディスプレイで遠隔参加者の映像を確認できるようになりました。これまでのように、1 台のモニターを囲んで身を乗り出す必要はなく、誰もが自然な視線でコミュニケーションを行える環境が整っています。
このように NDI は、ハイブリッド審理だけでなく、デジタルサイネージや証拠提示、特別イベント、さらにはセキュリティ用途まで幅広く活用されています。柔軟性と拡張性を兼ね備えた映像インフラとして、司法のデジタル化を支える重要な役割を担っているのです。
NDI を活用して、デジタルサイネージや証拠提示、特別イベント、さらにはセキュリティ用途まで幅広く展開している様子を見てきました。これほど簡単かつ柔軟に実現できるソリューションは、NDI 以外にはないと思います。
Nathan Nye 氏(戦略アドバイザー)

Richmond County の AV ソリューションシステム
NDI 導入の効果
記事公開時点で、ニューヨーク州統一裁判所システムではすでに 375 の法廷で環境刷新が完了しており、今後は管轄する約 1,600 の法廷すべてへ展開していく計画が進められています。
プロジェクトの拡大に伴い、Vincent 氏と彼ののチームも当初の 12 名から 55 名へと増員されました。また、裁判所システム全体の予算も 1 年間で 100 %増加しており、この取り組みへの期待の高さがうかがえます。
NDI を活用した法廷環境の刷新は、証拠提示の改善やハイブリッド審理への対応、運用効率の向上など、さまざまな成果をもたらしました。その結果、ニューヨーク州の法廷は、より使いやすく、効率的で、誰もが利用しやすい環境へと変わりつつあります。
具体的な成果
- 375 以上の裁判所に 10,000 を超える NDI エンドポイントを導入、現在も導入は拡大を続けており、今後さらに多くの法廷への展開が予定
- 機器稼働率 97% を実現、PoE 電源の自動再起動機能を活用することで、高い安定性と稼働率を維持
- ヘルプデスク対応の 75~80% をリモートで解決、現地対応の負担を大幅に削減し、少人数でも効率的な運用を可能に
- 法廷 1 室あたりわずか 3 日で導入を完了、短期間でシステム構築が行えるため、法廷の運営業務への影響を最小限に
- Magewell 製品の耐用年数が従来機器の 2 倍以上、機器交換や保守の頻度を減らし、運用コストの削減にも貢献
- 従来の法廷システムと比べて約半分のコストで刷新を実現、ニューヨーク州アルバニーの連邦裁判所プロジェクトと比較して、法廷 1 室あたりのコストを約 50% 削減しながら、完全なデジタル環境を構築
もちろん、このプロジェクトの成果は数字だけでは測れませんが、適切なテクノロジーの導入によって、陪審員はより審理に集中できるようになり、書記官や裁判官の負担も軽減されました。また、原告と被告の双方が、自らの主張や証拠をより適切に伝えられる環境も整っています。
人を中心に法廷環境を見直したことで、司法サービスそのものの質も向上し、テクノロジーによって「人の体験」を変えることが、より良い司法の実現につながる結果になりました。
NDI はとにかく確実に動作します。すべてがスムーズに機能し、高い信頼性を発揮してくれます。
Vincent 氏
使用されたソリューション
- Magewell NDIエンコーダー / デコーダー
- Pearl Nexus
- NDI 対応固定カメラ(Box Camera)
- NDI 対応 PTZ カメラ
- ManyCam
- OBS(NDIプラグイン対応)
エコシステム・パートナー
- Magewell
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