この度の新型コロナウイルス感染症に罹患された方々には謹んでお見舞い申し上げますとともに、一日も早いご回復と終息をお祈りいたします。また、感染拡大防止にご尽力されている皆様に、深く感謝申し上げます。

BLUE NOTE TOKYO は東京・南青山にあって、ニューヨークの”Blue Note”を本店に持つジャズクラブとして有名です。テーブルに着けば目の前のステージで演奏されるジャズを始めとした音楽、そして料理とお酒を楽しめる空間が魅力の、全国にファンがいる憧れの場所です。そんなジャズクラブも、3 月から 6 月前半までに予定されていたほとんどの公演が、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響で、延期または中止になりました。

CHALLENGE

営業再開は有料配信から

- チャレンジ -

 

5 月 25 日には東京などで緊急事態宣言が解除され、BLUE NOTE TOKYO でも営業再開の道筋が見えてきました(実際には 6 月 19 日からライブハウスに観客を入れた営業が可能になった)。しかし、当面は感染症対策を徹底した中での再開であり、収容可能な人数の制限がある状況が続くことになります。

そこで BLUE NOTE TOKYO では、”新しい生活様式” に合わせた新たな営業方法として、無観客でのライブを皮切りに、有料のライブ配信を始める決断をしました。

前代未聞のジャズクラブ自身による有料のライブ配信。このまったく新しい試みに現場で実際に取り組まれた、BLUE NOTE TOKYO 企画・制作部の担当者様とエンコード業務の担当者様を取材。ジャズクラブの現状と有料ライブ配信の今後、ライブ配信用のエンコードに使用された Wowza ClearCaster (ワウザ・クリアキャスター)についてお話を伺いました。

RESUMPTION

営業再開と現実問題

- 再開 -

株式会社ブルーノート・ジャパン、企画・制作部: 担当者様

「BLUE NOTE TOKYO では営業再開に向けて、新型コロナウィルス感染症への対策に取り組んでいます。自分たちだけでは判断の難しいところは、東京都の担当者に直接連絡を取り助言を得ています。」

「ただ、感染症対策を行ったとしても、当面は収容可能な人数が大幅に制限されるため、以前と同じ営業ではどうしても収益面では劣ってしまうこともあり、”新しい生活様式” に合わせた新たな営業方法として、有料のライブ配信を始めることになりました。

ライブ配信チケットは、実際にご来店されるチケット代の半額で始めることにしました。これは BLUE NOTE TOKYO を知る音楽ファンにとってはかなりリーズナブルな価格だと思います。」

REQUIREMENTS

有料配信への不安

- 要件 -

 

BLUE NOTE TOKYO には過去にもライブ配信を行った経験があります。撮影に関しても長年の経験があり、専門業者との連携が確立されているので問題ありません。しかし、有料配信となると話は変わってきます。

まず、チケットを購入された観客へ確実にライブ映像を届けなくてはなりません。そのためには、購入者だけにコンテンツを届けられるチケットと配信プラットフォームの仕組みや、配信プラットフォームへビデオとオーディオを送るエンコーダが必要です。

チケットの販売は、ぴあ <PIA LIVE STREAM>、イープラス <Streaming+>、ZAIKO(外国向け)、配信プラットフォームは Vimeo を利用することに決定しました。

エンコーダは、ひとまず自分自身で予算に合うエンコーダを色々調べてみたものの、たとえば、

  • どんなエンコーダを選べば良いのか(必要とする機能・性能は何か)
  • エンコードの設定が正しいのかどうか(自分の配信に適しているのか判断がつきにくい)
  • もしエンコーダがトラブルになったら…(本番前の短い時間の中でどう解決すればよいのか分かりにくい)

これらの不安が問題として浮き彫りになり、どのエンコーダが本当に良いのかなかなか判断がつきませんでした。

そこで、2011 年の震災復興支援のイベントがきっかけで知り合った、DPSJ の営業担当者に急遽連絡して相談してみたところ、Wowza ClearCaster(ワウザ・クリアキャスター)というライブエンコーダを紹介されました。

SOLUTION

専門家不要のプロフェッショナルエンコーダ

- ソリューション -

 

井上 高治 (日本デジタル・プロセシング・システムズ株式会社、セールスG):

「Wowza ClearCaster(ワウザ・クリアキャスター)の開発元であるWowza 社は、ストリーミング配信のワークフローにおけるリーダー企業の1つで、その設立(2005 年)以来、長年に渡り世界中のストリーミング配信のワークフローに携わってきました。その長年の経験で分かったことは、配信トラブルの大半はファースト・ワンマイル(※ First One Mile)、すなわちエンコーダと配信プラットフォーム / サーバーとの間で発生するということでした。

そんな配信ワークフローの命題とも言える問題を解消するために設計・開発されたのが Wowza ClearCaster です。」

※)インターネット網ではその特性上、データを送受信する際にいくつもの経由地(サーバーなど)を経由することになります。その際の経路で、出発点から最初の経由地との間をファースト・ワンマイル、到着点とひとつ手前のサーバー間をラスト・ワンマイルと言います。

どんなエンコーダを選べば良いのか

(必要とする機能・性能は何か)

Wowza ClearCaster はハードウェアを含むアプライアンス製品です。イベント会場などのストリーミング配信の現場でのエンコード業務を遂行するために、Wowza 社における長年のノウハウが随所に組み込まれています。テンプレートから簡単に設定を決定するだけで、すぐにストリーミングを開始できます。かつ、エンコードの現場で起こりかねない様々なトラブルを未然に防ぐために、アプライアンスの状態からビデオ信号、ネットワークの状態に至るまで、ヘルスチェックやモニターをするための機能が自動で起動し、もしも何らかの潜在的な懸念があった場合は、懸念のある個所を視覚的に示してくれます。

エンコードの設定が正しいのかどうか

(自分の配信に適しているのか判断がつきにくい)

プリセットで典型的なエンコード設定が用意され、設定調整できる範囲も限定されています。これにより十分な知識のない運用者が、設定ミスをしてしまうことで予期しないトラブルが発生する可能性を取り除いています。

もしエンコーダがトラブルになったら…

(本番前の短い時間の中でどう解決すればよいのか分かりにくい)

Wowza ClearCaster は、インターネット回線の状況に合わせて、ビットレートを自動的に調整するアダプティブネットワーク・エンコード機能(ABR とは異なります)を搭載しています。刻々と変化するネット環境でもストリームが配信サーバー / プラットフォームへ届くように自動制御されます。

また、エンコードやビデオ・オーディオの状態を把握できるヘルスモニタリング機能もあり安心です。

エンコード設定はクラウド上で管理されており、遠隔で操作できるように設計されています。もしもエンコード設定自体が疑わしい場合は、エンコードに詳しい技術者やベンダーサポートに相談して遠隔操作で設定を見直ししてもらうことも可能です。

BENEFITS & RESULTS

リモートのレクチャーで設置と配備が 30 分

- 利点と結果 -

設置と配備について

株式会社ブルーノート・ジャパン、企画・制作部: 担当者様

「Wowza ClearCaster の筐体サイズは 1U ラックマウントタイプで奥行きも大きすぎず、決して広いとは言えない機材スペースのデスクへ置くことができました。スイッチャーからの入力ソース SDI (BNC)と、インターネットに繋がる LAN ケーブル、電源を接続。そこまで準備したところで、DPSJ からリモートによる使い方のレクチャーを受けました。」

「エンコーダの管理画面へのアクセス方法や、テンプレートからの設定の選択の方法などの作業をWebミーティングでレクチャーを受けながら初めて設定をしてみたところ、わずか30 分程度で実際にプラットフォーム経由でストリーミング配信できる状態まで配備できました。」

有料配信について

株式会社ブルーノート・ジャパン、企画・制作部: 担当者様

「チャレンジと不安も抱えながら 2020 年 6 月 13 日(土)についに無観客での有料ライブ配信による営業再開を迎えました。

BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO "Live Stream"(ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ "Live Stream")

その翌日にも公演(SOIL&"PIMP"SESSIONS Live Stream from Blue Note Tokyo)の有料ライブ配信を行いました。」(取材を行ったのはこの 2 公演を行った翌日でした)

「有料ライブ配信は、都内や近隣県からの視聴者だけでなく、地方や、海外からの視聴もありました。普段は東京に足を運べない音楽ファンからは好評で、手応えを感じました。一部の配信サイトでは、一時的に接続が不安定になったケースもありましたが、一番不安だったエンコードはまったく止まることなく最後まで安定して稼働しました。おかげでエンコードに対する不安はもうありません。」

エンコードについて

株式会社ブルーノート・ジャパン: エンコード担当者様

「他の業務をこなしながら、有料配信用のエンコーダを任される負担は大きいです。Wowza ClearCaster は設置から配備されるまでを 30 分ほどで終えられましたし、アダプティブネットワーク・エンコードは本当にありがたいです。万一インターネット接続の帯域が一時的に落ちたとしても、それでもエンコードが止まらないように出力ビットレートを自動で調整してくれるというのは、非常に安心感があります。」

FUTURE

コロナ禍からコロナ後に向けて

- 将来と展望 -

 

この記事を書いている最中もコロナによって世の中の状況は刻一刻と変化しています。まだまだ新型コロナウィルス感染症の収束は見えていない状況です。

BLUE NOTE TOKYO は 6 月 13 日の無観客・有料配信による営業再開を実現し、その翌週からは制限された人数ではありますが観客を入れての公演もスタート。徐々に元に戻す動きが始まっています。

有料配信の継続

有料配信の礎と実績をコロナを切っ掛けに築き始めた BLUE NOTE TOKYO ですが、新型コロナが収束したときはコロナ前にはなかった事業モデルが完成するかもしれません。

従来の店舗に来店されるお客様だけでなく、国内・海外問わずインターネットで集客することが可能になりました。BLUE NOTE TOKYO では、さらに系列店の大型モニターへライブ配信することも実施しています。ライブハウスの収益モデルが大きく変化を遂げる可能性を感じました。

配信設備の拡張も視野に

取材に訪問したときの説明では、カメラ 8 台をスイッチャーに入れて、エンコーダ経由で HD 品質のものを配信プラットフォームに送っているとのこと。

将来的には 4K 配信にしたい、また、事業の展開などを考えると配信プラットフォームも自前の配信サーバーを構築したほうが良いかもしれないなど、将来への展望を語っていました。

株式会社ブルーノート・ジャパン、企画・制作部: 担当者様

「まず初回の有料配信を開始でき、懸念していたようなトラブルはまったくなく無事終えることができたことに胸を撫で下ろしています。ですが、もっと音質には拘りたいですし、そのために必要な設備の拡張も視野に入れています。是非ご期待ください。」

おわりに

この記事を読んで興味を持たれた方は、ぜひ BLUE NOTE TOKYO のサイトへ訪問いただけると幸いです。

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