機械学習とは

いきなりですが、質問です。

あなたは下の画像を何だと思いますか?

恐らく大抵の人は「冊子」か「薄い本」と答えるのではないかと思います。他には「ノート」や「メモ帳」、「パンフレット」、「書物」と答える方もいるかもしれませんが、この質問への回答としてはどれも正解と言えるでしょう。人は与えられた情報に対して、過去の経験から類推して答えを発することができます。ところが、今ほど機械学習(マシンラーニング)と深層学習(ディープラーニング)が発達していなかった頃は、コンピュータが答え(正誤は問わず)を発することすら難しかったのです。

コンピュータが上記のような答えを出せるようにする技術(アルゴリズム)のひとつが機械学習です。上の写真が何であるかをコンピュータに機械学習させるには、判断材料(例:ページ数や材質、表紙のタイトルなど)と一緒に、「本」や「冊子」などの画像を大量にインプットして蓄積します。コンピュータは蓄積されたパターンに基づいて、「本」なのか「冊子」なのか、それとも別の何かなのかのを答えられるようになります。一般的にはパターンの蓄積量が増えれば正確率が向上します。

大したことないように思いますか?しかし、機械学習を使わずに同様のことを実現するためには、人間が全てプログラミングしなくてはなりません。つまり、ページ数が 20 以下なら冊子、それ以上は本、20 ページ以下で A4 サイズならパンフレット、といった具合に膨大な条件分岐をプログラム化することになります。しかも、結果の大半は「分からない」になるでしょう。

コンピュータの処理能力の向上と、インターネットで学習できる情報の増加によって、機械学習は劇的に進歩しました。

深層学習とは

深層学習は機械学習を発展させた技術です。機械学習は人から与えられた判断材料を元に情報を分析・学習しますが、その判断材料によって精度が変化します。深層学習ではその判断材料を自ら抽出し学習する技術で、より人の神経に近い構造を利用しています。解析するもの、例えば動物であれば種類を見分けるために必要な特徴(全体的な色、目の位置や形状など)を、深層学習によって抽出して正解の確率を高めていきます。

機械学習および深層学習によってデザインされたものが、現在 AI (人工知能)として様々な商品やサービスに活用されています。

AI の実用化

AI は現在様々なものに活用されています。正直 AI を使うほどでもないものも存在しますが…。

それはさておき、AI で世の中を驚かせたのは Google DeepMind の「AlphaGo」(アルファ碁)ではないでしょうか。コンピュータが囲碁でプロ棋士に勝つことは不可能だと考えられていた時代もあったくらい難しいことでした。AlphaGo は人の棋譜を学習し、自己対局によって強くなった機械学習が産んだ AI 囲碁プレイヤーとも言えます。

最近さらに驚きのニュースが発表されました。「AlphaGo Zero」(アルファ碁ゼロ)の登場です。AlphaGo Zero は人による学習を行わず、機械学習を発展させた強化学習を使って自己対局を繰り返し行うことで強くなり、AlphaGo との対局を 100 勝 0 敗で破ったのです。AI がさらに進化していることが伺えます。

AlphaGo は非常に尖った AI の活用事例ですが、現在は身近なところでも AI は活用されています。ショッピングサイトやコンテンツ配信サイトでよく目にする「あなたにおすすめ商品」や「おすすめ動画」といったリコメンド機能です。他にも、AI を使ったサービスやアプリを目にする機会が増えました。 

コンテンツと AI

AI が実用レベルに達していることがご理解いただけたと思います。では動画コンテンツの制作や配信に AI がどのような影響を与えていくのでしょうか。 動画コンテンツの消費が劇的に増加しており、コンテンツの制作も配信も、収益化効率を如何に高めていくかが現在の課題となってきています。その課題をクリアにする手段のひとつが AI (機械学習と深層学習)ではないかと考えます。既に開始されているプロジェクトやサービスをいくつか挙げてみます。

Netflix

Netflix は 2017 年 1 月時点で 130 ヵ国をサービス対象地域とした動画コンテンツ配信サービスを牽引する一社です。Netflix のコンテンツ配信における個人ごとに生成されるオススメ(レコメンド機能)は、パーソナライズ・ランキングとページ生成、検索、類似性、レーティングなどを機械学習することよって成り立っています。

Adobe Sensei

2017 年 10 月開催の Adobe 社イベント「Adobe MAX」の Sneaks で大々的に紹介されました。Adobe Sensei は Adobe Creative Cloud での作業や業務効率化などを支援する AI をベースにした研究中の技術です。イベントでは実演デモも披露され観客を沸かせました。一例としては、Photoshop 合成で映画のポスター制作を見せ、前景イメージから推測された背景画像候補が一覧表示されたり、人物画像はあらゆる顔の向きが選択できたり、人物の切り抜きなどの作業を AI によって処理されるデモが実演されています。 他にも様々な可能性を下の動画から見ることができます。

Videogram

  Netflix の機械学習が「あなたが見たい映画・ドラマはこれではないですか?」とコンテンツそのものを提案するなら、Videogram の機械学習は「あなたはこの映画の、このシーンにでてくる猫に興味がありませんか?」と、コンテンツの中を提案できるようにします。

Videogram は動画の内部を機械学習・深層学習によってインデックス化します。インデックス化された中から、人が興味を持つと思われる場面をタイル状にして動画のサムネイル(ポスター画像)として表示する、コンテンツディスカバリー・プラットフォームです。

右側の動画は Videogram で処理されたものです。マウスを重ねると画像が拡大し、クリックすればその場面から再生が始まります。

Videogram のメリット:
  • 大量のコンテンツごとにサムネイルを抽出する作業から解放されます
  • 興味を引く画像を並べることでクリックされ易くなります
  • 視聴者の行動によってメンテナンスされます(クリックの多い画像はサイズが大きくなるなど)
  • 動画内部をインデックス化することで、動画内部の検索が可能になります

また、動画をシェアするときに好きな画像を選べます。自分と趣味が似ている人が SNS で繋がっている可能性が高いので、自然とシェアされる動画のクリック率は高くなります。

AI の課題とこれから

機械学習・深層学習を基盤とした AI 技術は完全に実用レベルに達しており、これからあらゆる所で活用されていくことは間違いないでしょう。とは言っても、まだまだ課題もあります。例えば、動画と連動するような広告モデルを考えてみましょう。

再生している動画中にクルーズ船が出てきました。AI がクルーズ船を認識して、豪華な船旅の広告を表示させたとします。ところが動画の次の場面では船の中で食中毒が発生し、救護されているのが流れたとしたら…。楽しい旅行を提案したい広告としてはよろしくありません。

動画の中のオブジェクトが何であるかを予測することは可能ですが、その動画のストーリーや意図といったものまで汲み取ることはまだできません。この課題をクリアするためには、より多くのサンプルデータをより深い機械学習・深層学習アルゴリズムで解析する必要があります。

まだまだ課題があるとは言え、AI は様々な企業で研究・開発が進んでおり、既に Google や Amazon、Microsoft から AI を活用するための API やライブラリなどが提供されています。AI はこれから益々身近なものになっていくことでしょう。