原文: "Video CMS: What It Is and Why You Need One"(2022 年 2 月投稿分)
現在、インターネット上のトラフィックの 80 % を動画が占めており、動画コンテンツはかつてないほど多く出回っています。この膨大なコンテンツを整理したり、保存したり、アクセスしたりする簡単な方法がなければ、単なるデジタル・クラッターでしかありません。動画 CMS(Content Management System: コンテンツ管理システム)は、オンラインビデオ配信におけるメディア資産やストリーミングのリポジトリの中心として機能し、コンテンツを無駄なく届けるために役立ちます。
上にあるビデオをご覧になることで、動画 CMS プラットフォームとは何か、なぜ必要なのか、どのように導入されるのかについて理解を深めることができます。
動画 CMS とは
動画 CMS は、動画の資産を管理するために使用されるアプリケーションです。他の優れたコンテンツ管理ツールと同様に、動画 CMS は、デジタル資産の保存や検索、および配布を簡素化するデータベースとして機能します。
データの整理は動画 CMS にとって重要な機能であり、検索性は直接的なメリットです。これらのデジタルライブラリは、パブリッシャーの動画アーカイブ全体をホストし、分類し、アクセスするための中心的な場所として機能します。コンテンツ配信者とエンド ユーザーの両方が、タイトル、キーワード、コンテンツ カテゴリなどの属性に基づいて、探している動画をすばやく検索できるようになります。
動画 CMS では、メタデータといったものを自動的に抽出することも、手動で入力することも可能です。また、より高度な動画 CMS プラットフォームは、人工知能(AI)を活用してコンテンツを迅速に分析し、適切なインデックスを作成します。
さらに、動画のパフォーマンスや視聴者データに関する分析も動画 CMS のインターフェイスに含まれ、将来の意思決定やワークフロー全体の可視化に役立っています。
これらによって、放送局はコンテンツを内部で管理しつつ、外部との共有が容易になります。
動画 CMS を利用する理由
新居を購入したとき、屋根裏部屋にラベルのない DVD がびっしり詰まっているのを想像してみてください。さらに、最悪なことに DVD が 1 カ所ではなく、家全体に散らばっていたとしたらどうでしょうか。
膨大な DVD コレクションに高価なものがある可能性もあります。しかし、DVD を素早く分類する方法がなければ、おそらく在庫の山をすべて処分する気になるでしょう。結局のところ、整理と保存、共有を簡単にできない動画コンテンツには価値があるのでしょうか?
動画 CMS は、いくつかのコンテンツ管理プロセスを自動化して、オンライン動画を 1 つの場所にホスティングすることで、このようなニーズを解決しています。企業は、動画 CMS ツールを利用して、IT 部門に負担をかけずに動画ファイルを簡単にストリーミングおよび管理することができます。
パブリッシャーにとって、これはデータ入力の合理化につながります。CMS は、コンテンツの取り込み、タグ付け、保存を迅速に行い、その過程で発生するあらゆるタスクを自動化します。例えば、アップロードされた動画に関するメタデータを生成して保存することで、CMS は放送事業者の負担の一部を分担しています。
視聴者にとっては、コンテンツを見つけやすくなります。CMS は、視聴者がシステム内のコンテンツを検索し、どこでも再生できるようにします。
また、両者にとって CMS は視聴者の視聴履歴に基づき、将来のコンテンツレコメンドに使用することができます。この結果、コンテンツオーナーにはより多くの再生回数(別名、コンテンツによる収益金)をもたらし、視聴者にはパーソナライゼーションの向上をもたらします。つまり、関係者全員にとって Win-Win になります。
動画 CMS のメリット
まとめると CMS の価値とは、メディアのメタデータとその結果としての発見しやすさに結びつけられるところです。具体的には、CMS は次のようなことを指します:
- 一元化: コンテンツを 1 つのシステムに保管することで、追跡、管理、検索が容易になります。
- 再利用と増幅: 配信者は動画 CMS によって、ストレージ内に埋もれているかもしれないコンテンツを再利用することができます。
- ユーザーフレンドリーなアクセス: 動画 CMS プラットフォームは、視聴者が見たいコンテンツを検索で発見できる簡単な方法を提供します。
動画 CMS の仕組み
1. 取り込みとタグ付け
動画 CMS のコアとなるのは、動画資産を管理するための API(Application Programming Interface)です。動画コンテンツを取り込み、保存し、各ファイルを区別するためのメタデータを付けて保存することができます。放送事業者は、1 つまたは複数のファイルをシステムにアップロードしたり、Live-to-VOD 機能を使用してライブ ストリームから録画したりすることができます。
動画 CMS は、各ファイルに関連するメタデータを、次の 3 つの方法のいずれかで収集します。
- 抽出されたデータ:動画の物理的な側面に関する情報(尺、解像度、使用コーデックなど)をファイル自体から自動的に抽出します。
- ユーザーが入力するデータ: 被写体や参加者などと言った組織の内部構造に基づいた動画タグを、各ファイルのアップロード時に個々に手動で入力できます。
- 機械的なデータ: 人工知能(AI)や機械学習(ML)を用いて追加情報を収集することも可能です。キャプチャされた音声データをキャプション技術に利用したり、物体検出などのコンピュータビジョン技術も活用できます。
管理インターフェイスを使用して、パブリッシャーは自身が定めたカテゴリーや階層の制御や、各ファイルのステータス設定やユーザーとの関連付け、さらには単一および大半の動画資産の更新を行うこともできます。例えば、管理者は動画を公開 / 非公開にマークしたり、視聴者向けにプレイリストを作成したりすることができます。
2. 処理
次に、動画 CMS は各ファイルを動画配信用に処理します。これは、あらゆるエンドポイントへデリバリーできるように、動画をトランスコードしてパッケージ化することを指します。こうすることによって、視聴者がファイルを選択する度に、動画 CMS はそのデバイスとの接続に最適なフォーマットでコンテンツを提供することができるのです。
3. 検索機能の有効化
最後に、映像資産を発見できるようにするために API を活用します。これにより、ユーザーはコンテンツに簡単にアクセスできるようになります。ユーザーは動画の主題に関連するテキストベースのキーワードを入力したり、カテゴリーやタグを基にさらに絞り込んだ検索も可能です。あとは動画を選択すれば、アダプティブ・ビットレート(ABR)ストリーミングなどの技術のおかげで、どこでも動画を見ることができます。
動画 CMS に求められるもの
動画 CMS に求められる主な機能
- トランスコードとパッケージング: 視聴者の誰もが高速インターネットに接続された 4K ホームシアターを持っているならば、動画コンテンツを配信するのは簡単です。しかし、現実はそうではありません。視聴者はあちらこちらから様々なデバイスでストリームにアクセスします。様々なスクリーンにバラバラのインターネット速度に対処するには、映像の処理とトランスコードが不可欠です。アダプティブ・ビットレート・ストリーミングを有効にすることで、コンテンツを様々なフォーマットに再パッケージ化して、あらゆるデバイスで確実に再生できるようになります。プロトコルに柔軟性を持たせた Wowza のようなストリーミングプラットフォームを選択することによって、多くのエンドポイントでビデオ再生の確実性が増します。
- ライブ to VOD : ライブコンテンツを頻繁に放送していて、ライブストリームからビデオオンデマンド(VOD)用の動画資産を即座に生成したい場合は、ライブ to VOD ストリーミングをサポートするビデオプラットフォームを探したほうが良いでしょう。この機能によって、動画資産をライブラリに迅速に追加し、コンテンツの再利用によるさらなる収益化の機会を生み出すことができます。
- 柔軟なメタデータモデル: 動画 CMS のプロバイダーが、動画データを構築する方法に制限をかけることはありません。新しいフィールドやカテゴリーを追加できるようにすることで、ビジネスにとって最も有効な内部組織構造を柔軟に定義することができます。
- 自動メタデータ生成: コーデック、解像度、尺などの物理的な属性用のメタデータを自動生成することで、コンテンツのタグ付けを高速化できます。情報は多ければ多いほど良いので、これらのプロセスを自動化する動画 CMS を探すと良いでしょう。
- シンプルで柔軟な検索: かつてベンジャミン・フランクリンは言いました「For every minute spent in organizing, an hour is earned.(整理整頓にかける 1 分ごとが、1 時間(の余裕)を生む」と。探しているものを素早く見つけられる技術を誰もが使用しているなら、動画 CMS ツールにのみ当てはまります。シンプルで柔軟な検索は、まさにそれを保証してくれます。
- API アクセス: 動画 CDN への API アクセスにより、ツールを他のシステムと簡単に連携させて、動画ホスティング体験を制御することができます。ほとんどの動画 CMS プラットフォームには直感的なユーザー インターフェース(UI)が備わっていますが、API アクセスでは、特定の UI に縛られることはありません。
より複雑な要件を含む高度な動画 CMS 機能:
- ワークフローモデル: ワークフローモデルでは、動画を適切にルーティングするためのコンテンツの役割と状態を定義することができます。著者や編集者、発行者などを記述したり、未公開や公開中などのライフサイクルの状態を記述したりして、組織全体の管理を合理化します。
- バッチ転送: 他のプラットフォームからアセットを移行する場合は、一度に何十万ものファイルを移動できるバッチ転送機能を備えた動画 CMS が便利です。
- プレイリストの生成とプレイアウト: プレイリストは、時間割に従うリニアなチャンネルとして再生されるアセットのグループをプログラムする機能を提供します。この機能により、デジタルサイネージから企業のニュースフィード、キュレートされたリニアチャンネルを持つ OTT プラットフォーム用の 24 時間 365 日対応のプレイリストまで、何でも作成できます。高度なプレイリスト機能には、広告(プレ、ポスト、ミッドロール)やライブコンテンツを混在させることも可能です。
- 人工知能 / 機械学習(AI / ML): 自動の文字起こしやトピックの検出、オブジェクトの認識、キャプションの生成用の AI / ML ツールは、コンテンツのカタログ化に掛かる手作業に置き換わることが期待されています。結果、AI / ML は検索能力を向上させ、プラットフォームを利用するすべての人に、より良いユーザー体験を届けることができます。例えば、医療関連のキーワードを含むすべての動画は、組織の「ヘルスケア」カテゴリに自動的に分類されるかもしれません。一方、違法なコンテンツを含む動画は、さらに審査されるよう自動的にフラグが立つかもしれません。
- アナリティクス連携: データ分析は、QoE(Quality of Experience:体験品質)やコンテンツの分類、広告のターゲティングなどの改善に役立ちます。アナリティクス機能を持つ動画 CMS を利用するということは、ワークフロー全体を可視化し、データドリブンな意思決定を行うことができることを意味します。
- クリップの抽出と編集: ライブラリ内にあるビデオのクリップやハイライトを抽出したり、簡単に編集するためのツールは、コンテンツを再利用やアセットの価値を高めるもう一つの手段となります。すべての利用可能なコアアセットの全バージョンを保ちつつ、インスタグラムのようなソーシャルメディアに短編動画を公開したり、ライブイベントのハイライトリールを作成したり、録画したイベントをトリミングしたり、コンテンツを様々な方法で作り直すことができます。
スタンドアロン製品 vs. 連携ソリューション
動画 CMS ソフトウェアは、スタンドアロン製品として購入することも、エンタープライズ向けビデオプラットフォームとの連携コンポーネントとして購入することもできます。連携したソリューションは、パブリッシャーのインフラを簡素化し、ライブと VOD コンテンツが混在したリニアチャンネルを簡単に作成できるため、好まれる傾向にあります。
さらに、動画配信ワークフロー全体の可観測性を向上させるためには、ビデオ技術に関するすべてのニーズを満たすシングルプロバイダーソリューションを見つけることが重要な鍵となります。複雑なマルチベンダーのワークフローはオンライン動画の悩みの種にもなりました。連携された動画 CMS ソリューションは、この複雑性を緩和し、最終的にはエンドユーザによりシームレスな体験をもたらします。
Coming Soon: Wowza 社の CMS 搭載ビデオプラットフォーム
Wowza 社では以前よりあった要望に応えるべく、動画 CMS やアナリティクス機能などを備えた統合ビデオプラットフォームを構築しているところです。以下のビデオでその一端をご覧いただけます。また、Wowza 社のメーリングリストに参加して最新情報を入手することもできます。